ブラッド・スクーパ 森博嗣-研ぎ澄まされていく剣術-

小説

「ヴォイド・シェイパ」シリーズ二作目となる『ブラッド・スクーパ』は唯一無二の清廉な世界観を踏襲しつつも、前作とは大きく変化した点がありました。

本作は”剣”がテーマです!

各地を流転しながら、旅先での出会いと別れにゼンが新たなことを学んでいくのが前作に対し、本作は一か所に留まり、死地において剣の腕を覚醒していく物語になっています。

旅と剣、物語の大きなテーマにある後者の部分が色濃く描かれた作品になっていますので、剣豪小説が好きな人には前作よりもさらに楽しめるのではないでしょうか。

さらに、一か所に留まることはそれだけ長い時間を同じ人間とともに過ごすことになりますから、人間をより深く観察することにもなります。

以前よりも少し、俗世間で生きる人間との波長が合う部分も出てきているので、これまた三作目ではどんな姿を見せてくれるのが楽しみになってくるものです。

シリーズ二作目、”繋ぎ”の役割しっかりと果たした今作もぜひ期待しながら読んでください!

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どんな小説家?

森博嗣 作家、工学博士。1957年12月7日愛知県生まれ。某国立大学工学部助教授のかたわら。1996年に『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。以後、続々と作品を発表し、人気を博している。

『ヴォイド・シェイパ』著者紹介文より

本書のような剣豪小説を書くことは稀であり、本来はミステリーを主軸とする小説家です。

『すべてがFになる』をはじめとするS&Mシリーズなどは現在でも多くの読者から人気を博しています。

概要

立ち寄った村で用心棒を引き受けることとなったゼン、盗賊は家宝となっている「竹の石」を狙っていた。
迎えた襲撃の日、ゼンはハヤを守るため、竹の石を守るため奮戦するのであった。

後日、思いがけず明かされる盗賊の正体に、驚きを隠せないゼン、果たして盗賊団の正体とは?

死地を迎え、ゼンの剣術がより研ぎ澄まされたものになっていく今作。
聡明な女性・ハヤとの出会いは、ゼンの思考もより深いものにしていくのであった。

おすすめしたい人

・前作が好きな人
当然のことではありますが、前作『ヴォイド・シェイパ』が好きな人は楽しめると思います!

世界観がそのまま引き継がれているので、ヴォイド・シェイパの雰囲気好きだった人ならば、今作も期待してOKです!

・剣術を楽しみたい方へ
一方で、前作よりも多くの頁を費やして描かれているのは、剣のシーンです。

自分よりも強い難敵を前にして、ゼンの腕はより鋭く、研ぎ澄まされたものになっていきます。

剣の道を黙々と進んでいくゼンが、今後どうなっていくのかはまだまだ分かりません。
しかし、今作での出来事を経て、剣術が一つ上の高みに到達したことは確かでしょう。

そして、ゼンの場合は、剣の腕が上達することは同時に、剣をふるうことの理由をより深く考えることにも繋がっています。

これまでは常に自分一人で考えていたゼンですが、今作では同じように深い考えのもつヒロイン・ハヤの存在が際立っています。

彼女と会話を通じて、新たな考えや発見に辿り着くことになったゼン。ハヤとのかけあい、問答は本書の大きな魅力といえるでしょう。

本書の魅力

・清廉な世界観
時代設定、国の名前などは示されていないので、本シリーズの舞台が日本なのか、はたまた架空の国であるのかは分かりません。

スズカ、シシドなる苗字を思えば、もしかしたら日本なのかもしれないと自分は考えています。

しかしながら、舞台が日本であろうとなかろうと本シリーズで味わえる清廉な世界観は唯一無二のものでしょう。

俗世間とは離れて山の中で生きてきた主人公・ゼンのズレた感覚は、それだけ純粋さを保って生きてきたことの表れでもあります。

新しい出来事の一つにつき、二も三も考える性格や、何事も自分の頭で答えを求める姿。

その清廉さ・好奇心は、人間が生まれた時の姿をそのままに保っているようです。

ゼンの可愛らしくもかっこいい姿は、今作でも変わらず魅力的です。

・ハヤの存在
これまでゼンと会話をする人間は、ゼンの思考についていけないか、はたまた二回りも先を進んだ思想を持っている人がゼンに教えを授けるという形が多かったです。

そんななかで、ハヤは同じ目線で、同じように物事を深く考える、ゼンにとってははじめての対等の存在といえるのかもしれません。

ハヤとの会話は、本書では最も場面が多かったのではないでしょうか。
何気ない一幕を深掘りして話していく姿は、非常お似合いの二人にうつりますよね。

相変わらずモテモテなので、ハヤからも好意を寄せられますが、素知らぬ姿で居座るところだけが少し小憎らしいですね笑

まとめ

「ヴォイド・シェイパ」シリーズ第二作目『ブラッド・スクーパ』は前作の清廉な世界観を維持しつつも、剣の臨場感あふれる一幕を楽しむことができます。

また、学友とも形容できるハヤとの出会いもゼンの人生にとっては、非常に貴重な経験になることでしょう。

前作よりも、俗世間にちょっとだけ寄り、剣の腕も一回り成長したゼン、この先どんな姿を見せてくれるのか、今作を読めばきっと第三作も気になることではないでしょうか。

引き続き、「ヴォイド・シェイパ」シリーズは読んでいくので、次回の更新もゆるくお待ちください、それでは!

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