西部戦線異状なし レマルク-18歳の熟練兵-

小説

第一次世界大戦、戦場に立った18歳の兵士が戦場で死ぬまでに経験したことが淡々と描かれる小説です。

ボイメルや彼の戦友の姿、そして『西部戦線異状なし』というタイトルにあなたは何を思うのでしょうか?

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どんな小説家?

レマルク(1898-1970)ドイツ生まれ。
1916年、第一次世界大戦に出征し、戦後は小学校教員やジャーナリストなどの職に就きながら、小説を執筆する。’29年、『西部戦線異状なし』を発表し、一躍世界的な人気作家となる。’32年、反戦作家としてナチスの迫害を受け、スイスへ移る。翌年国籍を剥奪され、著書は焚書の処分を受ける。’39年アメリカに移住。主な著書に『凱旋門』『愛する時と死する時』など。

『西部戦線異状なし』新潮文庫、著者紹介文より

概要

第一次世界大戦、一人の兵士が死んだ。パウル・ボイメル。

若き青年兵は何を見て、何を思い、死ぬまでの時を過ごしたのか。

次々と死んでいく彼の戦友たち、己の殺した兵士との対話。戦場で経験した数々の出来事が彼の心に波紋を広げていくのであった。

おすすめしたい人

・海外文学を読む人へ

海外文学を読む人であれば、読んでおいて損することはないでしょう。
文豪レマルクの代表作です!

内容の面白さでいえば、海外文学が苦手な自分でも読み切ることが出来たので、きっと大丈夫です!

ただ、翻訳本の特徴として、文章は無機質になりがちなので、普段あまり読まない人にはつまらなく感じる人もいるかなと思います。

・映画を見た人へ

『西部戦線異状なし』は映画としても世界的名作です。なので、そっちのほうで知っている方もいるかもしれないですね。
映画が面白かったら、本書を読んでみてもいいかもしれません。

映画と原作ではちょっと違うところがあるかもしれませんし、実際、映画の尺では小説のすべてを描くことはなかなかに難しいと思います。


自分は映画のほうはまだ見ていないのですが、どうやら物凄く評価が高いらしいので、チェックしておきたいです!

小説の魅力

・圧倒的リアルさ

これは小説です。あくまでフィクションですが、著者の経歴を思うに、全てが創作とは思えません。きっと、小説の基となった経験があったはずです。

食事や衛星環境に上官など、そこには地獄と言えるほどの環境がありますが、一方でそれだけではありません。信頼できる仲間・心の許せる友人、ひと時の幸福な時間も確かにあります。

しかし、なぜでしょう。ひと時の幸福な時間はより悲惨さを引き出すかのようです。本書では「死んだほうがマシだ」というような圧倒的な暴力性をもった描写はありません。

ただひたすらに終わらない戦争、いつ死ぬか分からない緊張感、次々と死んでいく仲間、そのような変えることができない現実をもってゆっくりと精神を削られていくようです。

凄惨な場面を強調していないからこそ、重くのしかかる閉塞感があります。

そこが、本書の「圧倒的なリアルさ」だと自分は感じました。

・わずか18歳にして

さて、主人公のボイメルは18歳です。彼は確かに18歳らしい素振りや話をすることもありますが、戦場においての彼は違います。

完全に戦場慣れしている彼は、戦場というものでの身の処し方を心得ています。

しかし一方で、彼はこうも思うのです。

「18歳にして初めて手にした職が人を殺す仕事で、これが終わったら普通の生活に戻れるのだろうか?」と、兵士になりきれず、憐憫の心を持ち合わせているからです。

だからこそ、自分が殺した兵士と対話を始めて、心が壊れていく場面は目が離せません。極限状態から日常の価値観に戻ってしまったとき、敵に人間を感じてしまった時、兵士はきっとこうなるのかもしれません。

人を殺すことでしか生の可能性を見出せない、極限状態に慣れきってしまっている18歳。戦場においての彼は信じられないほどにタフですが、そんな彼でさえ戦場のことを完全に割り切ることなどの出来ないのです。

家族と会い、幸せな時間を過ごしても、これからまた戦場に帰ることを思えば「帰ってこなきゃよかった」と考えるわけです。

わずか18歳でありながら、戦場を経験することで色んな意味で彼がその年齢からはかけ離れていきます。

本書は思想全開の反戦小説ではありません。圧倒的なリアルさをもって、18歳の青年がどのように死んでいくのかを淡々と描いてきます。

だからこそ、多くの人間の心に刺さり、世界的な反戦小説となったのでしょう。

まとめ

レマルクの代表作『西部戦線異状なし』、最後の最後でタイトルが回収される場面は、ある種、最低の読後感を得ることになるのかもしれません。

しかし、『西部戦線異状なし』というタイトルに本書の魅力が詰まっていることも確かでしょう。

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