血涙 北方謙三-楊四郎と石幻果-

時代小説

『楊家将』の続編として描かれた『血涙』

前作で絶対的強者として君臨し続けた楊業に代わり、物語の最強格となったのは耶律休哥。

『楊家将』では楊業の高い壁に跳ね返され続けた彼が、本作では楊業の息子たちの高い壁となり立ちはだかる。

耶律休哥をはじめ精強な軍を擁する遼と、兵の強さでは劣りながらも国力では勝る宋の決戦の行方は……

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どんな小説家?

北方謙三 1974年、佐賀県唐津市生まれ。作家。

ハードボイルド小説を発表しながら、日本および中国を舞台にした歴史・時代小説に取り組む。

おもな現代小説に『眠りなき夜』(吉川英治文学新人賞)『友よ、静かに眠れ』『過去、リメンバー』『旅のいろ』など。

歴史・時代小説に、『武王の門』『破軍の星』(柴田錬三郎賞受賞)『波王の秋』『三国志』『水滸伝』(司馬遼太郎賞受賞)など。2003年に上梓した本作品で、第38回吉川英治文学賞を受賞。

『楊家将』著者紹介文より

概要

楊業亡きあと、遼では記憶を失くし捕虜となっていた楊四郎が石幻果と名乗り、その武勇を轟かせる。一方、宋では楊業の死により一度は解体された楊家軍も六郎を中心にして再結成を果たす。

運命づけられたように相まみえる楊家軍と石幻果、楊業の血をひく者同士の戦いが始まる。

小説の魅力

・遼の登場人物

『楊家将』でもそうでしたが、『血涙』でも遼の登場人物たちは非常に魅力的でしたね。

耶律休哥は「戦が強くてクール」という前作での魅力に加え石幻果の父親としての温かさを、蕭太后は孫を溺愛するなどの祖母らしさを見せ、より感情移入のできるキャラクターになっていました。

続いては、石幻果。彼は『楊家将』においても楊四郎として主要な人物ではありましたが、本作では主人公として描かれます。特に、楊四郎の記憶を取り戻し、二つの人生のいずれかを選ぶかと苦悶する姿は本作最大の見どころかもしれません。

また、楊四郎の時から恋をしていた瓊峨姫と結ばれ、家族を築いていきます。二度の人生でいずれも同じ人を好きになり結ばれるとはとてもロマンティックで素敵ですね。

楊四郎の人生では、母親とは疎遠で、父親とも軍人としての関係が強く、家族というものを感じてこなかったため、石幻果の人生で耶律休哥、瓊峨姫、息子の英材など幸せな家庭を築けたことは生まれ変わって良かったと感じられることではないでしょうか。

まとめ

『血涙』は悲劇的な要素も強い作品ではありましたが、彼らが人生を悔いることなく戦場で死んでいく様は美しくもありました。

本筋とは関係ないですが、シリーズを通して全く成長しなかった宋という国も、ある意味ではシリーズの魅力だったかなと今では思えるようになりました。

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