本所深川ふしぎ草紙 宮部みゆき-超人気小説家の時代小説-

時代小説

小説を読んできた人なら誰しもが一冊は著者の小説を読んだことがあるのではないでしょうか。代表作は数知れず、時代を象徴する小説家の一人だと思います。

しかし、『火車』『模倣犯』『理由』などの小説は読んだことはあっても時代小説は読んだことはない人もいるのではないでしょうか。今回は、著者の時代小説の中から一つ『本所深川ふしぎ草紙』を紹介しますが、ストーリーテラーとしての巧みさが時代小説でも遺憾なく発揮されています!

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どんな作家?

1960年生まれ。東京都出身

東京都立墨田川高校卒業。

法律事務所等に勤務の後、87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。

1992年 「龍は眠る」で第45回日本推理作家協会賞長編部門、

同年「本所深川ふしぎ草紙」で第13回吉川英治文学新人賞。

1993年 「火車」で第6回山本周五郎賞。

1997年 「蒲生邸事件」で第18回日本SF大賞。

1999年 「理由」で第120回直木賞。

2001年 「模倣犯」で毎日出版文化賞特別賞、第5回司馬遼太郎賞 、

第52回芸術選奨文部科学大臣賞文学部門をそれぞれ受賞。

2007年 「名もなき毒」で第41回吉川英治文学賞受賞。

2008年 英訳版『BRAVE STORY』でThe Batchelder Award 受賞。

大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき 公式ホームページ『大極宮』 (osawa-office.co.jp)

27歳でデビューしたことも凄いですが、著者の場合は幼少期から小説に慣れ親しんだのではなく、20歳までは本格的に小説を読んだりはしていなかったというのだから末恐ろしい話です...

この他、wikipediaでは小説を書いている人ならあまりの凄さに卒倒してしまうようなエピソードがたくさんありますので、気になる人は下のリンクからどうぞ!

宮部みゆき – Wikipedia

しかしながら、デビュー以降30年人気小説家であり続けたことは間違いなく著者の努力の賜物でありますから、決して才能だけでないことも忘れてはいけませんね。

おすすめしたい人

・時代小説を読んだことが無い人

・著者の時代小説をまだ読んだことがない人

初めて時代小説を読もうとする人にとっては慣れ親しんだ小説家から入ることで抵抗が少ないのではないかなと思います!

また、現代小説にあった巧さ・面白さは時代小説にもそのまま表れています。著者の作品を楽しめる人なら読まないのはもったいないです!!

概要

『本所深川ふしぎ草紙』は本所七不思議に因んだエピソードに紐づけて、七つの短編から成っています。

本所七不思議

1 片葉の芦-その場所では何故か片方にしか葉がつかない芦があるという

2 送り提灯-夜道に提灯をつけずに歩いていると、後ろから宙に浮いた提灯が後ろをつけてくるという

3 置いてけ堀-その堀では釣った魚を持って帰ろうとすると、どこからともなく「置いてけ」という声がする。気味悪く思い、家に帰って魚籠を開くと釣った魚が一匹も残らず消えているという

4 落葉なしの椎-落ち葉を一切落とすことの無い椎の木があるという

5 馬鹿囃子-夜中になるとどこからともなく囃子の音が聞こえてくる。しかし、翌朝になると囃子は止んでいて、本人以外には誰にもそんな音は聞こえていなかったという

6 足洗い屋敷-その屋敷には毎晩「足を洗え」と天井を破って大男の足が突き出される。足を洗ってやれば何事もなく消え行くが、もし足を洗わないと足は暴れて屋敷を破壊してしまうという

7 消えずの行灯-ある二八蕎麦屋の掛け行灯の火は、雨の日も風の火にも変わらず灯されていて、消えているのを見た人はいない。しかしながら、油を足しているところもまた誰も見たことがないという

物語として楽しむだけでも十分に面白いのですが、これらの七不思議事前情報として知っていると、より本書の面白さを味わうことが出来ます!

とはいっても、このままでは物語と七不思議がどう絡んでくるのか想像しづらいでしょうから一つあらすじを紹介します。

片葉の芦

彦次はかつて物乞いをしていた。

藤兵衛寿司では一日の終わりに残った飯を全て捨ててしまう、藤兵衛寿司の娘・お美津は食べ物を粗末にするその方針に不快感を抱いており、彦次に向けて片葉の芦を立てることで飯を分けることのできる合図としていた。

時は経ち、恩返しにと顔を見せた彦次はお美津と再会する。淡い慕情とともに片葉の芦を覚えていた彦次であったが...

小説の魅力

  • 七不思議の使い方が素晴らしいこと

各物語のリードとして七不思議が巧く使われています。七不思議を人間の心理の比喩として使ったり、時には擬人化したりしています。特に、一話目の『片葉の葦』は必見です。片葉の葦という一つの不思議話でこんな物語に昇華してしまえるのかと驚くことでしょう。特にラストシーンには...未読の方もいらっしゃるのでここまでにしますね笑

ただこの他の、六つの不思議話もそれぞれ物語の核となっていますから、是非、この七不思議が物語にどのようして絡んでくるのか注目しながら読んでみてください。

  • 時代小説が敬遠される要因である二つの点を感じないこと

堅苦しさがない

現代小説を数多く手がけている人気小説家だけあって、時代小説にありがちな「地の文が多くて堅い文章」という壁がありません。何だか小難しくて、読みづらかった。本書を読んでそんな風に思う人はまず居ないのではないかなと思います。

差別的表現が少ない

時代小説の抵抗ある所の一つに差別的表現が挙げられると思います。時代を映すためにはある意味仕方のないことなのかもしれませんが、抵抗がある人が出てきてしまうのも当たりまえのことです。執筆された時代が古いと、よりその色が強くなることもありますが、本書では多くの人が気分を害するような呼称・表現は少なく、抵抗なしに読んでもらえるのではないだろうかと思います。

まとめ

『本所深川ふしぎ草紙』は七不思議に紐づいた七つの物語です。人気小説家である著者の現代小説での魅力が、時代小説にもそのまま反映されており、ストーリーが絶妙でありとても読みやすいです。

『本所深川ふしぎ草紙』七つの短編の中で、みなさんの好きな物語はどれになるのでしょうか。七つとも魅力的な物語ではありますが、自分は特に『片葉の芦』『馬鹿囃子』がお気に入りでした。

また、本書が面白かったという人にはもう一冊おすすめしたい作品があります!

これは本書で登場していた「回向院の茂七」が主役を務めている捕物帳です!こちらも人気の高い作品ですので、本書が面白いと思った人はこちらも是非読んでみてください!

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