テーバイ王家の悲劇はオイディプスだけでは終わりませんでした……
最初に『アンティゴネー』に至るまでの作品を紹介します。
作品の順番としては、『ライオース』『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『テーバイ攻めの七将』と進んでいきます。
アイスキュロスとソポクレスの作品が混在してはいますが、基本的には上記の作品の順番で読んでいくと、テーバイ王家の歴史のとおりに追えることができます。
どんな小説家?
ソポクレス(紀元前496年ごろ-紀元前406年ごろ)
Wikipediaより
完全な形で現存している作品は『アイアース』、『アンティゴネー』、『トラキスの女たち』、『オイディプース王』、『エーレクトラー』、『ピロクテーテース』、『コローノスのオイディプース』の7作である。ソポクレスはレーナイア祭やディオニューシア祭の期間中にアテーナイで開催される悲劇のコンテストで、50年近くのあいだ最も賞賛された作家であった。コンテスト参加30回のうち、1位の栄冠を手にしたのが18回、残りはすべて次点である。3位以下には一度もならなかった。
言うまでもなく天才です。2500年の時を越えて読み継がれる作品というだけで異次元であることは分かります。また、Wikipedia読むだけでも凄い人生を送っていて、一回読んでみると凄い面白いと思います。
特に、ソポクレス劇の英雄像は、是非読んでほしいです!
概要
さて、最初に物語の始まりまでの説明をします。
オイディプス亡き後、後継の座を争い、息子であるエテオクレースとポリュネイケースが戦う。敗れたポリュネイケースは、アルゴスに逃れ、その国の王女の婿となり、再びアルゴス軍を率いてテーバイ攻めを敢行する。アルゴス軍はテーバイに敗れるものの、兄弟は相討ちに果て、兄弟の叔父にあたるクレオーンが王座に就くこととなる。
作品の登場人物
アンティゴネー:テーバイ王女、オイディプスの娘
イスメーネーアンティゴネーの妹
クレオーン:テーバイ王、アンティゴネーの叔父
ハイモーン:クレオーンの息子、アンティゴネーの婚約者
エウリュディケー:クレオーンの妃
先の戦争を受けてテーバイ王・クレオーンは、一つの決定を下したのである。
アルゴス軍をたきつけてテーバイを攻め王位を乗っ取ろうとしたポリュネイケースの死体を野ざらしにし、これを葬ることは一切の禁止とした。そして、命令を破ったものには死罪を命じることにしたのである。
全ての者がクレオーンの命令に従うなかで、ただ一人逆らうものがいた。ポリュネイケースの妹、アンティゴネーである。
彼女は、死者に分別はないし、そもそも死者を埋葬することは神々の掟である。俗権をもってそれを禁じることが間違っているのだと主張する。一人生命をかけて亡兄の埋葬へと向かうアンティゴネーに迎える結末とは……
おすすめしたい人
・悲劇がもっと欲しい人へ
『オイディプス王』よりかは理不尽要素が少ないですが、『アンティゴネー』もなかなかのものです。
とにかく『悪の教典』なみに人が死んでいきます。
テーバイ王家では生き残ることのほうが難しいですね……
何故これほどまでに死ぬのかというと、ギリシア悲劇自体が、ギリシア神話に基づいて創られた作品だからのようです。
ナルシストの語源で有名なナルキッソスも、ギリシア神話に登場しています。
彼の最期は、水面に映った自分の姿が素敵すぎて、恋に落ち、そのまま溺れて死んだというギャグみたいな展開で死んでいきます。
だからこそ、ギリシア神話に基づくテーバイ王家もこれほどまでに簡単に死んでいくのでしょうね。
さて、脱線した話を戻すと、
本作は重くて暗い話が好きな人、純粋な悲劇好きにはかなりおすすめかなと思います。リアリティに欠けるという野暮なことさえ考えなければ、きっと物語を共有できるはずです。
小説の魅力
・アンティゴネーの意志と勇気
アンティゴネーは命がなくなることを分かっていて、ポリュネイケースの埋葬を行います。偏愛ともいえるほどの強い愛と意志をもって彼女は叔父であるテーバイ王に逆らいます。
彼女の強い意志とそれを支えるものとは?アンティゴネーの思想や主張が本書一番の魅力でしょう。人間は何を恐れて、何に命を賭すべきなのか。人間の普遍的な主題とも受け取ることができます。
・繰り返す悲劇の連鎖
悲劇はただ一回に収まることはなく連鎖していきます。『オイディプス王』でもそうであったように本作でも見られる悲劇の連鎖は魅力といえるでしょう。
特に、人の持つ愛が引き金となり悲劇を呼ぶ構図が、悲劇の神髄といえるのではないでしょうか。
まとめ
『アンティゴネー』は愛の物語か、偏愛の物語か、悲劇の物語か、読み手によって様々な感想と解釈の余地がある本作、これだけの作品が紀元前に生まれたのですから末恐ろしいですね……
さて、ギリシア悲劇に必ず出ては恐ろしい預言のを残して消える、盲目の預言者・テイレシアスこそ「全ての黒幕」だと言う人いるじゃないですか、自分もちょっと思います。
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