二巻では急展開を迎えるラストでしたが、
三巻では、五代目徳兵衛とともに五鈴屋を支える大黒柱として立つ幸を見ることが出来ます!
いつか治兵衛に語ったように、商いの戦国武将として着実に歩みを進めていく姿に、これまでの二巻で経験してきた労苦が、一つ報われたような明るい気持ちになる巻でした。
しかし、ただでは終わらないのが『あきない世傳』シリーズ、最終盤ではまたもや波乱のラストがあります……
どんな小説家?
高田郁 兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒。1993年、集英社レディスコミック誌『YOU』にて漫画原作者としてデビュー。2008年、小説家としてデビューする。著書に「みをつくし料理帖」シリーズ、『出世花』などがある。
『あきない世傳 金と銀 源流篇』著者紹介文より
大ヒットシリーズ「みをつくし料理帖」の作者として有名です!
「あきない世傳」では、九つで奉公に出されるという厳しい環境のなかでも、人情とひたむきな気持ちを忘れずに商いの世界を生きていく女性を描いています。
読者の心をぐいと引き寄せる作品が魅力の小説家ですね!
概要
四代目徳兵衛の急死により、跡継ぎ問題に揺れる五鈴屋であったが、富久は四代目の弟・惣次を指名し、五代目徳兵衛の座へと収まることになった。
商才に優れる五代目は内外の改革をもって五鈴屋の再興へと歩みを進めていくが、辣腕すぎる故に奉公人には厳しく、彼らの間に入る幸の存在が五鈴屋を影ながら支えていたのだ。
順調そうに見えた商い。しかしながら、五鈴屋を大店にするために打った渾身の一手が思わぬ事件へとつながり……
小説の魅力
・開花していく商いの才覚
一巻、二巻では苦しい環境下にあったこともあり、才覚が発揮される機会が少なかったのですが、本巻では商才に優れる店主の御寮さんという立場になった幸の能力が大いに発揮されます。
五鈴屋に来てから十年という歳月が経ったことも大きいでしょう。これまでの経験が確実に幸を成長させています。
一方で、幸ならではの独創性や、常に相手を思う心配りも五鈴屋の商いに大きく貢献することになるのです。
・一筋縄ではいかぬ物語
本シリーズの面白いところは、物語の展開が早く、どんどんと読ませるところにあります。逆境のなかでも活を求め、順調そうに見えても思わぬところから火がつくことがあるわけです。
本作でも、五代目の就任から四代目で傷のついた五鈴屋の再興、そして一巻二巻で登場していた人物との再会など、見所がたくさんあります。
さらに、幸は思わぬところからアイデアを生み出すため、読んでいるほうも意外な展開のつながりに思わず引き込まれていきます。
展開の多さ、引き出しの多さの先に、幾度の驚きが待ちうけているのです。
そして毎度のことながら、巻の最終章では波乱があって次巻が気になっての終わりです!
まとめ
『あきない世傳 金と銀(三)』では、ついに幸の才覚が発揮されていきます。時には惣次も凌ぐ幸の商才には、大きな可能性を感じるばかりです。
また、二十一になり大人の女性としても、五鈴屋を背負う御寮さんとしても、魅力があります。生まれ持った容姿の美しさはさることながら、幾多の忍苦の上でも失わなかった気品高さは、幸の最たる美徳かもしれませんね。
それでは、本巻もぜひ楽しんでお読みください!それでは。
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