時代小説というジャンルをあなたは読んだことはありますか。めっちゃ好きです!っていう人はもしかしたらあまりいないのかもしれません。
同世代では、小説をそれなりに読む人でも、時代小説が好きという人はまだ会ったことがありません。祖父なんかとNHKで放送していた『雲霧仁左衛門』の話で盛り上がることはあっても、同世代での認知度は余裕の0%です。
では、なぜ時代小説は若い世代には届きづらく、手に取られないのでしょうか。
時代小説が手に取られない原因
結論としては、難しそう、つまらなさそう
この二つに尽きるのではないかなと思います。
まず、難しそうという点、正直言いますとこれは正しいです。時代小説では普段聞きなれない色んな単語が出てきます。
丁稚・手代・番頭・郡代・与力・同心・行李・厠・へっつい・行灯
どうでしょうか?これらが何を指しているのか全部分かる人はまずいないのではないかなと思います。上記のような単語に加えて、地名も旧国名だし、時間・ものの長さ・通貨の単位だって現在とは異なります。
勇んで読んではみたものの、読み進めていくと一つ一つの単語にナニコレ?状態で、いちいち調べていると結局『難しくてよく分からない』となるわけです。
もう一つの要因、つまらなさそう。
あれっておじいちゃんたちが読むもんでしょ。そう思っている人も少なくないでしょう。しかし実際、この指摘も正しいのかなと思います。統計から引っ張ってきたデータではないのですが、時代小説って体感で言えば読むのは40歳以上の人が多いのではないかって感じは自分もしています。
現在、伊坂幸太郎や知念実希人、米澤穂信の読みやすくて面白い小説があるなかで、わざわざハードルの高い時代小説読むかと問われたらそうはならないですよね笑
時代小説を楽しむために
しかし、そうはいっても時代小説のジャンルを読まず嫌いしてしまうのはもったいないんですよ。何てたって時代小説はめちゃくちゃ面白いですから。
これから時代小説を楽しく読むために、私たちがすでに獲得している二つの『経験』の話しをします。二つの経験が当てはまる人はきっと時代小説を楽しめるだけの十分な下地があります!
一つ目は、英文を読んだことのある経験です。これ全く関連性なさそうですが、実は凄い重要な点です。
英文を読むときってまずは、分からない単語は放置して、全体をサクッと読んで大筋を掴もうとするじゃないですか。あの経験が凄い大事で、時代小説も全く同じなんですよね。
まずは大枠としての物語を楽しむことが大事で、よく分からない単語なんてすっ飛ばしていいんです!
最初はナニコレ?だった単語も、多くは物語が進むうちになるほどこういう意味なのかもとなんとなく分かってくるようになります。
だから、時代小説を読んでいる時に分からない単語を調べる必要は一切ありません。
もっといえば、最後まで単語なんて分からなくても十分に楽しめるだけの物語がちゃんとありますので、分からない単語は徹頭徹尾すっ飛ばしてOKです!
二つ目は、100年前の海外の小説家を読んでいる経験です
カフカ・ドストエフスキーなど、100年弱、それ以上前の作品でも読まれている小説があります。彼らの作品は決して読みやすさはなくとも、舞台のバックグラウンドが分からなくとも読まれているわけなんですよ。
裏を返せば、これらの障害を乗り越えてなお彼らの作品を楽しめるほどの読者が、最近書かれた、かつ日本を舞台にした話を楽しめないわけがないってことです!
なぜかっていうと、考え方や行動様式、組織体制なんかは昔から今に引き継がれているものも多くあるわけです。バックグラウンドを理解していること、黙示的な前提条件が成立していること、これらは物語に違和感なくスッと入っていくために重要な点です。
だから、文化も風土も風俗も異なる、100年も前の海外小説家を楽しめるあなたが、ちょっとばかしの昔話にハードルを高く構える必要は全くないのです!
前述二つの経験をしている、勉強家で読書家のあなたが時代小説という素晴らしいジャンルを敬遠してしまうことはとてももったいないので、次からはあなたの手にも時代小説をとってもらえるように時代小説の魅力について話していきます!
時代小説の魅力
時代小説の魅力は一点、人の結びつきが強いことです。
舞台設定が昔であること、これは当然今よりも村社会の色が強いということです。大庄屋だろうが武士だろうが誰しもが一人で生きていけるだけの力はありません。
個々人で活動することなどはまず不可能で、必ず人との結びつきのなかで彼らは生きています。
だからこそ、人間関係での悩みだったり、生きていくうえでの不自由さが生じやすく、他方で助けあいや無償の優しさ、義理人情に厚い風土が生まれやすいのです。
時代小説の多くは、自分の力だけでは生きていくことの出来ない一人の人間が、人間関係で時に苦しみ、時に温かさに触れながら懸命に生きていく話なのです。
自分は、良くも悪くも人間臭さが色濃く出される時代小説というジャンルがたまらなく好きなんですよね。
はじめて時代小説を読むなら
さてさて、つらつらと書いてきましたが、結局何を読んだらいいの?っていう話をしてなかったですね。
時代小説には一平二太郎(藤沢周平・司馬遼太郎・池波正太郎)といった三人の巨匠がいて、本当であれば自分も彼らの作品を推したいのですが、ここではもっともっと読みやすくて時代小説への入り口となってくれる作品たちを紹介します。これから紹介する作品を読んで、「この感じ好きかも」って思った人は一平二太郎の作品も読んでいってくれればなと思います!
おすすめ① 『天地明察』冲方丁
おすすめ② 『最低の軍師』蓑輪諒
おすすめ③ 『しゃばけ』畠中恵
どれも間違いなく面白いのであらすじ読んで気になる作品を一つ読んでみてください。是非、時代小説という未知の扉を開いてくれることを心より願っています!!
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