北条氏康シリーズ第二作では、北条氏康が三代目の座を継ぎ船出までが描かれています。物語のメインとしては、二代目である北条氏綱と軍配者・曽我冬之介の二人の活躍でしょう。
優秀な当主と、優秀ながらも当主に振り回され実力を発揮する機会に恵まれない軍配者が対照的に感じました。
どんな小説家?
富樫倫太郎 1961年、北海道生まれ。98年に第四回歴史群像大賞を受賞した『修羅の跫』でデビュー。「陰陽寮」シリーズや「妖説源氏物語」シリーズなどの伝奇小説、『蟻地獄』『堂島物語』などの時代・歴史小説、警察小説『SRO 警視庁広域捜査専任特別調査室』など、幅広いジャンルで活躍している。
『早雲の軍配者』著者紹介文より
北条サーガとして、北条早雲から代々活躍を描いています。戦国ファン、北条ファンにはぜひ読んでほしいシリーズです!!
詳しくは以下の公式ページをご覧ください。
概要
友好関係を築いていた今川家に家督争いが生じた。北条家としては、長く誼を築いてきたほうの後継ぎである今川義元を支援し、関係は盤石なものに思えた。しかし、義元の懐刀・太原雪斎の鬼謀により、今川家との関係は急速に悪化していくのであった。
西に武田・今川、東に里見、足利公方、両上杉氏と戦線の拡大により、敵国が増える北条家。北条氏綱は難局をいかに乗り越え、北条氏康に後継したのか。
国府合戦を中心に軍配者シリーズで活躍した冬之介・勘助も登場し、北条氏康の施政も始まる。読み応えのある一冊です!!
小説の魅力
・北条氏綱の優秀さ
前巻に引き続き、本書も多くを北条氏綱時代の物語が占めます。かといって、北条氏康が読みたいのに……というようなことは一切ありません。
北条氏綱の物語もとても面白いのです。父がどのように戦国の世を渡り歩き、領土を拡大させていったのか偉大なる初代と三代目の影に隠れてあまり日の目を浴びない二代目・北条氏綱でしたが、彼の優秀さというのは本書を読めば、よく伝わるかと思います。
・太原雪斎の鬼謀
本書で北条家を苦しめたのは、今川義元の懐刀である太原雪斎であることに間違いはないでしょう。小太郎にも考えつかないほどの根回しの早さと行動力、常に一手先を見据えて放たれる外交能力の高さに読者の皆さんも驚かされたのではないでしょうか。
軍配者シリーズ、北条氏康シリーズでも幾多の活躍を見せてきた小太郎でさえ、彼の寝技のまえでは後れをとっているように見えます。
彼自体には分かりやすい迫力がないだけに、底知れない恐ろしさを強く感じました。彼の外交能力の高さがこれから先今川家をどのように発展させ、北条家に影響を及ぼすのか、こちらもまた目が離せないですね。
・主役の揃い踏み
北条家ではついに北条氏康が三代目に就き、内政能力の高さを発揮していきます。西に目を向ければ今川義元、武田晴信が当主の座につき、山本勘助が武田への仕官を求めていきます。東では、扇谷上杉氏では風前の灯火たるお家を冬之介が支え、安房の雄・里見義堯も登場します。
軍配者シリーズを既読の人も、そうでないみなさんも物語が佳境へと近づいていくのをひしひしと感じているのではないでしょうか。
ただでさえ面白いのに今後はどうなっていくのか、ますます目を離せない展開になりそうですね。
さらに次巻のタイトルは、河越夜戦篇とあり、北条氏康・北条綱成を語る上では欠かせない重要な戦にワクワクが止まらないですね。
強敵が出揃うなかで北条氏康率いる北条家がどのように窮地を乗り越え、勢力を拡大していくのか、期待感を高まらせてくれる一冊だと思います!
まとめ
北条氏康が本格的な活躍を見せるのは次巻からでしょうが、既に物語の面白さに満足している読者は多いのではないでしょうか。
『北条早雲』『北条氏康』と続き、いつも通り何かとスポットライトを浴びない北条氏綱ですが、彼の物語は『北条氏康』全五巻のうち二巻にわたり描かれています。
北条氏康がいかにして名君となりえたのか、その陰には偉大なる父の姿と影響があったはずです。北条氏綱の活躍にもぜひ注視して、北条サーガを楽しんでください!!
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