いわゆる「心中もの」を初めて読んだのですが、二人の熱量に圧倒されました。
時を重ねるにつれて互いの思いを確かめ合い、相手を大切に思うゆえにすれ違い、最期は駆け落ち添い遂げる。
道ならぬ恋だからこその凄みを感じました。
そして、何よりも心中に対する捉え方も変わりました。
心中=悲劇であると思っていましたが、部分的にしか正しくなかったですね。
愛を確かめあった二人の心中は、全てを捨てようやく手にした最期の幸福であり、本質的には悲劇と捉えるべきではないのかもしれません。
どんな小説家?
諸田玲子 1954年、静岡県静岡市に生まれる。父は詩人の諸田政一。上智大学文学部英文科卒業。フリーアナウンサー、化粧品会社勤務を経て、テレビドラマのノベライズや翻訳を手がけた後、作家活動に入る。
1996年、『眩惑』で小説家デビュー。
wikipediaより
2000年、『幽恋舟』で第13回山本周五郎賞候補、『誰そ彼れ心中』で第21回吉川英治文学新人賞候補。
2002年、『源内狂恋』で第15回山本周五郎賞候補、『あくじゃれ瓢六』で第126回直木三十五賞候補、『笠雲』で第23回吉川英治文学新人賞候補。
2003年、『其の一日』で第24回吉川英治文学新人賞受賞。
2007年、『奸婦にあらず』で第25回新田次郎文学賞受賞。
2009年、『美女いくさ』で第15回中山義秀文学賞候補。
2012年、『四十八人目の忠臣』で第1回歴史時代作家クラブ賞受賞。
2018年、『今ひとたびの、和泉式部』で第10回親鸞賞受賞。
概要
宗太郎の様子の異変を感じ取った瑞枝は、男の正体を探る。宗太郎が変わってしまったのか?それとも別人に成り代わってしまったのか?
得体の知れない夫ではなく、自分が心より慕うものは誰なのか?人を愛することを知った瑞枝の運命が転がり始める。
小説の魅力
・官能的な描写
瑞枝は若く美しく、その美貌を見初められ書院番を務める旗本の家に嫁ぐことになります。
夫からの執拗な愛撫、責苦を受け、屈辱と快楽に喘ぐ描写が多く、妖艶で官能的です。
しかし、これらの描写が昇華するのは遂に心に愛するものと添い遂げた時でした。わずかな時を惜しみ、互いに愛を確かめ合うために絡みあう四肢の描写はこれまでとは全てが対照的に映ります。
穢れ、望まない快楽、罪深さを感じるのが夫との描写であれば、それら全てを美しく熱い愛に塗り替えたのが心に愛する者との描写でしょう。
性描写の多い作品ではありましたが、読後にはこれらの積み重ねが本作の核をなしているのだと思いました。
・心理描写の豊かさ
本作では瑞枝が心のうちで渦巻く葛藤や寂寥、熱い恋心などが非常に丁寧に描かれていて、瑞枝の脆く危うい恋と、物語を纏う不穏な雰囲気が巧みに演出されていました。
人と接することで喜怒哀楽、様々な感情が瑞枝のなかには渦巻き、それら一つ一つに、読者の心が乗っていきます。
テンポの速い作品ではないのですが、幸福と一抹の痛みが伴う最期を見届けようと、物語が進むにつれて夢中になって読んでいました。
まとめ
『誰そ彼れ心中』は情熱的で一途な恋物語です。心中ものを読んだことのない人にはぜひ挑戦してみて欲しい作品です!
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