心揺さぶられる圧巻のエンタメ巨編!
競馬をやったことのない自分がこれほどまでに惹かれたのだから、知っている人はもっとすごい興奮を覚えたはずです。
なんといっても、『ザ・ロイヤルファミリー』良いタイトルですね。
競馬といえば金、賭博のイメージが強くて、実際そことは切っても切り離せない世界であることは間違いないでしょう。確かに、競走馬は幾多の人間の欲望と夢、金を乗せて駆けます。
しかし、本書ではもう一つ競馬の新しい魅力を教えてくれます。
どんな小説家?
早見和真(はやみかずまさ)
『ザ・ロイヤルファミリー』著者紹介文より
1977年神奈川県生まれ。2008年『ひゃくはち』で作家デビュー。2015年『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。『ひゃくはち』『イノセント・デイズ』以外にも、『ぼくたちの家族』『小説王』『ポンチョに夜明けの風はらませて』など多くの作品が映像化されている。他の著書に『店長がバカすぎて』『神さまたちのいた街で』『かなしきデブ猫ちゃん』(絵本作家かのうかりん氏との共著)などがある。
デビュー作『ひゃくはち』は名門野球部の補欠部員を描いた話で、著者自身が名門である桐蔭学園出身であったことからも、内容が何かと話題になりましたよね笑
『ひゃくはち』『イノセント・デイズ』『ザ・ロイヤルファミリー』『店長がバカすぎて』など多くの人気作品を世に送り出した作家だけに、連載中の『八月の母』にも期待ですね!
概要
税理士事務所に勤めていた栗須栄治は退職と友人との再会をきっかけに、一人の経営者と出会うことになる。彼は人材派遣会社を経営する傍ら馬主として活動していた。
ロイヤルホープとロイヤルファミリー、山王耕造と中条耕一、父から子へと引き継がれる競馬の世界とは?
おすすめしたい人
・競馬の興味がない人へ
競馬なんて一度もやったことがありません、そんな人にこそ読んでほしいです。
素人の自分は、競馬に関わる人間と言われれば、ジョッキー、馬主、調教師ぐらいしか想像できなかったのですが、本書ではもっと多くの人間が登場しますし、例に挙げた人々のこともより深く描かれています。
競馬とは金と欲の世界である、そんな風なイメージを持っている人は多くいると思いますし、実際にこの小説でもそのことは否定しません。競走馬の引退後の行方など闇の部分にも触れています。
それでもなお、どれだけの人間が馬を愛し、競馬というものを支えているのかがよく描かれています。
例えば、馬主。近年では、大物芸能人や元プロ野球選手が馬主の競走馬がビッグタイトルを制したことで大きな話題となりました。しかし、華々しい姿とは裏腹に実情としては、ほぼ全ての馬主が赤字であるという現実があります。
それではなぜ彼らは大金をはたいてわざわざ馬主になり、続けるのか?そのような疑問に対する答えが本書では丁寧に描かれています。
競馬には、金と欲が乗っていることは間違いありませんが、一方で外からは見えてこなかった多くの関係者の本気の愛情を感じるとることが出来るのではないでしょうか。
小説の魅力
・継承の物語
本書を貫く一番の大きな主題が継承にあるでしょう。
ディープインパクトの産駒がいまなお競馬界を席巻するように、血統が重視される競馬ではより強く継承が表に出てきます。
それと同時に、本書では馬主の継承の物語でもあります。タイトルであるロイヤルファミリーには二つの意味が内包されていて、ここがたまらないわけです。
競馬とはどのように継承されてきたのか、競馬の世界を覗いてみることで知る新しい世界があります。
まとめ
『ザ・ロイヤルファミリー』、競馬の世界を知らない人にこそ刺さる魅力がきっとあるのではないでしょうか。
そして、本書もまた山本周五郎賞というビッグタイトルを制した物語です!ぜひ読んでみてください
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