義民が駆ける 藤沢周平-義民その裏側に-

時代小説

江戸後期、老中・水野忠邦から発せられた三方国替え。
変わりゆく情勢の裏側とただ朗報を信じて行動を起こす百姓たち。彼らは何のために立ち上がりどのように戦ったのか?

百姓の知恵と行動力、幕府の体制、絡み合う策謀など一つの事件の裏側には多くの物語があり、、、

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どんな小説家?

藤沢周平(1927-1997)
1971年(昭和46年) – 「溟い海」で、第38回「オール讀物」新人賞受賞。
1973年(昭和48年) – 「暗殺の年輪」で、第69回直木賞受賞。
1986年(昭和61年) – 「白き瓶」で、第20回吉川英治文学賞受賞。
1989年(平成元年) – 「市塵」で、第40回芸術選奨文部大臣賞受賞。
1989年(平成元年) – 作家生活全体の功績に対して、第37回菊池寛賞受賞。
1994年(平成6年) – 朝日賞受賞。第10回東京都文化賞受賞。
1995年(平成7年) – 紫綬褒章受章。
1997年(平成9年) – 鶴岡市特別顕彰、山形県県民栄誉賞受賞。

Wikipediaより

概要

江戸後期、天保の世に老中・水野忠邦から一つの政策が命じられた。川越藩、長岡藩、荘内藩の三方国替えである。

荘内藩だけが致命傷を被る政策を阻止すべく、自らと藩を救うべく荘内藩の百姓たちは江戸を目指して歩きはじめる。

小説の魅力

・政治の狡猾さ

三方国替えの発端から終わりまで、起きうる全てのことに対して潔白さはありません。常に誰かの欲望のなかで議案は揉まれていきます。

政治家という存在の大きさ、腹黒さ、優秀さ、本作一つから江戸時代であっても現在と変わらぬものがあるように思いました。

身勝手ではあるけれども血統により力のある者、政治的な実務能力は低くても処世術に優れる者、権力を見誤り足元をすくわれる者、目的を実行するためには手段を選ばない優秀な者などたくさんの人物が表れます。

唯一、違うところとえいば”大奥”の存在でしょうか。

この存在があることによって、江戸時代は現在よりももっと複雑でブラックボックスな政治体系になっていたのかもしれませんね。

・百姓の牙

上段で記したように政治とは複雑で利権の絡み合ったものですから、たかが地方の藩の百姓一つでどうにかなるものではないことが分かります。

しかし、それでも百姓たちが懸命に駆けたことで、情勢に一つの楔を打ち込んだことも事実なのです。

では、どうやって楔を打ち込んだのか?ここにある百姓の狡猾さも本作の見どころです。

百姓たちは何も考えず江戸まで訴えに出たわけではありません。複数のシナリオを考え、世論の動き方を頭に入れ、どうすれば効果的かを考えて行動を起こします。

普段はおとなしく統治されているだけの百姓が見せる牙と政治家顔負けの実行力に、爽快感や希望を感じることでしょう。

まとめ

『義民が駆ける』では、三方国替えの裏側を掘り下げ、事の発端から終わりまでを老中から百姓まで、多くの政治的立ち位置から描いた作品です。

政治家の狡猾さと相対する百姓たちの行動力、まっすぐな感動はありませんが、百姓たちの賢さと行動力に面白みを感じる作品になっています。

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