梟の城 司馬遼太郎-忍者の本懐-

時代小説

今回は司馬遼太郎氏の直木賞作品ということので、王道のなかの王道といった感じですね笑

とは言っても、読んでみたら氏のイメージとはちょっと異なる作品で、案外意外性があり、面白かったです。まず、『梟の城』って歴史小説ではなく時代小説なんですよね。

『竜馬がゆく』『燃えよ剣』『世に棲む日日』などの代表作にあるように、多くは実在した人物を描いていくものが多いなかで、本書『梟の城』はなんと忍者を主人公に置いた小説です!

さて、事前知識もなく読み始めた自分は最初はとても驚きましたが、読み始めれば意外とすんなりと読み進めていくことができました。個人的には忍法帖シリーズよりも好きかも。

忍法帖シリーズ(山田風太郎)がエログロを駆使して圧倒的に娯楽性を追求したのに対し、『梟の城』では職業人としての忍術や、忍者が捨てたはずの人間的な部分を色濃く描いた作品といえるでしょう。

どちらが好みかは個人の好みでしょうが、『梟の城』も「忍法帖シリーズ」も時代のブームの火付け役となったことは確かなようです。

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どんな小説家?

司馬遼太郎(1923-1996)

『梟の城』(1959年)『竜馬がゆく』(1962年)『燃えよ剣』(1964年)『国盗り物語』(1965年)『坂の上の雲』(1968年)など数多くの代表作がある小説家。

いわずもがな歴史小説界の帝王ですね笑

なんといっても司馬遼太郎氏の発行部数は群を抜いています。小説が今よりも多くの人にとって娯楽とされている時代で、長年トップランナーとして活躍されていたわけですから、まあ納得といえるでしょう。

自分はこんなブログを書いておきながら実は大して読んだこともなくて、既読作品が『燃えよ剣』『戦雲の夢』『世に棲む日日』で、この『梟の城』って感じです。

はい、これからたくさん読んでいきますw

次は、『峠』を読んでみようかなと思っています。あとは、『夏草の賦』『花神』『翔ぶが如く』もいずれって感じですね……

概要

天正伊賀の乱の生き残りである忍者、葛籠重蔵と風間五平。二人は異なる生き方を選んだ。

葛籠重蔵は復讐に命を燃やし、信長の後継者である豊臣秀吉の暗殺を目標に生きる。

一方で風間五平は、伊賀を売り忍者を捨てて俗世において出世することを選ぶ。

相反する道を歩む二人だが、それぞれの人生は絡み合うことになるのであった。

忍びという過酷な職業から離れていたことにより、人間らしさを持ってしまった重蔵と、出世の道を選んだもののその道でも過酷な運命が待ち受ける五平。

果たして、二人は本懐を果たすことができるのか?

一方で、本書では彼らを取り巻く忍びたちも非常に魅力的です。

甲賀忍者の長である摩利支天洞玄、くノ一の小萩、木さるなど、彼らとの愛憎渦巻く濃密な駆け引きにもぜひ注目してください!

おすすめしたい人

・「忍法帖」よりエログロを抑えた忍者小説を読んでみたい人へ

忍者小説といえばまずは山田風太郎の忍法帖シリーズが挙げられるでしょう。しかし、エログロをふんだんに盛り込んだ作品は、意外と人を選ぶと思います。

そこで、もう少しマイルドな小説はないか?といったときにおすすめしたいのが『梟の城』になるでしょう。司馬遼太郎×直木賞といえば圧倒的な訴求力がありますしね笑

『梟の城』は忍者でありながらも情に厚かったり、愛するものと生きる道などを模索したりとかなり世俗じみた内容になっています。

これが忍法帖シリーズとは異なる魅力といえるのではないでしょうか。

・司馬遼太郎の時代小説

歴史小説家としての一面が強いなかで、時代小説を描いていたことは意外です。もし、司馬遼太郎氏のファンの人で本書を読んだことがない人がいたらぜひ読んでみることをおすすめします!

小説の魅力

・二人の主人公の生き方

重蔵と五平、二人の忍者の選んだ道の違い、しかしながら絡み合っていく人生と、二人の結末。対照的でもありながら似た者同士な部分もある二人の忍者が魅力的です。

主人公は重蔵ですが、五平もなかなかにいい味を出しています。五平は伊賀や忍者を捨てているのですが、考え方や生き方が重蔵よりも忍者っぽいところがまた面白いんですよね。

目的のためには手段を選ばない、人を信じず利用価値で考えるなど、遂行者としての能力は五平が重蔵に勝る部分です。

こんな風にして、二人の忍者を対比させたときに浮かび上がる忍者像が面白く描かれています。
従来、画一的な表現で描かれがちな忍者というものを人間らしく浮かび上がらせていることが、本書の魅力といえるでしょう。

・二人のくノ一の魅力

小萩と、木さるもまた異なる魅力があります。

まずは、小萩のほうはヒロインといった立ち位置であり、敵方の忍びにあたります。

一方で、木さるは、伊賀忍者の棟梁の娘ですので、いわば味方側ですね。

小萩のほうはくノ一として生きるなかで次第に重蔵に惚れてしまう自分に葛藤するのに対して、木さるは最初からあっけらかんとしていて自分の感情に正直です。忍びの掟に自分を縛り付けず、奔放はつらつとしています。

また、魅力といった部分でも一つ違いがあります。

色気、色香といった魅力の強いのが小萩であるに対し、正直でかわいらしい魅力をもつのが木さるです。

二人のくノ一は、重蔵、五平ふたりの忍者の運命と密接にかかわっていくことになりますが、彼女たちの生き様、そして最後も目を離せないものになっています。

あとちょっと言いたいことはありますが、これ以上はネタバレになるのでここは我慢します笑

まとめ

『梟の城』は司馬遼太郎が直木賞を獲得したいわば出世作ともいえる作品です。

忍者としての生き方、そして物語の終わり方も含めて非常に情感あふれる作品になっていますので、一つ読んでみても面白いと思います。

それでは、次の司馬遼太郎作品は『峠』になりますので、読み終わったらまた感想をあげたいと思います!それでは。

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