幸にとっても五鈴屋にとっても、過去と現在は切り離せないものなんだなと。しみじみとした第七巻でした。
どんな小説家?
高田郁 兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒。1993年、集英社レディスコミック誌『YOU』にて漫画原作者としてデビュー。2008年、小説家としてデビューする。著書に「みをつくし料理帖」シリーズ、『出世花』などがある。
あきない世傳(一) 著者紹介文より
概要
江戸に進出してしばらく。七代目店主の猶予である三年も迫るなか、五鈴屋は未来に向けて新たな試みに挑戦し続けていた。
未来へと歩む日々のなかでも、早逝した六代目店主・智蔵の縁に支えられたりと、過去からの繋がりで現在があることも強く感じさせられ…
小説の魅力
・過去と現在と未来
第七巻では、かつてともに五鈴屋を支えた惣次、智蔵。亡くなった母や再び一緒に暮らすことになった妹など。様々な人物が有形無形に七代目店主・幸の商いに関わっていきます。
過去から不断の努力を続けた結果、現在があり、現在も懸命に生きたからこその未来が待っているのでしょうね。
兄を亡くし母と別れてから店主となるまで。
関わってきた人々の縁に支えられながら、七代目店主として商いを続けています。幸ひいては五鈴屋の歴史の長さを感じる一冊でした。
・大きな変化はなくとも
あきない世傳シリーズは、次から次へと思いもよらない幸不幸が振りかかり展開の早さが特徴的だなと感じています。幸が奉公人出されてから七代目店主となるまではまさに息つく暇もなく、次々に大事が襲ってきます。
そんななか、第七巻でははじめて”大転換”が無かったといえるでしょう。
テンポの良さが魅力の物語だと感じていたのですが、本作はそれでも十分面白かったです。
五鈴屋が「買うての幸い、売っての幸せ」を叶えるために、懸命に商いを行う姿さえ見られれば、それで十分なのかもしれないなと思いました。
それだけ、一読者として五鈴屋に心が入り込んでいるということですね。
まとめ
第七巻は大きな展開こそなかったものの、これからの行く末に確かにつながる一冊でした。
五鈴屋と幸が歩みを止めることはこの先もないでしょう。次の巻でも新しい試みに期待したいですね。
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