黒田如水 吉川英治-天才軍師の試練-

時代小説

黒田如水(黒田孝高・黒田官兵衛)は羽柴秀吉の軍師として活躍した家臣です。竹中重治とともに「両兵衛」と称された名軍師として有名ですね。小寺家の家臣として生まれるも、最終的には筑前52万石の領主となりますから、戦国の世において立身出世を見事に果たした人物です。人格者・キリシタン大名としてもまた有名であるかと思います。

2014年には「軍師官兵衛」で大河ドラマの主人公を務め、2020年末に行われた戦国大名総選挙でも第8位といまや人気・知名度ともに戦国を代表する人物といえるでしょう!

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どんな作家?

吉川英治(生1892-没1962,活動期間1923 – 1962)

『鳴門秘帖』(1933年)『宮本武蔵』(1939年)『三国志』(1940年)『新書太閤記』(1941年)『新・平家物語』(1951年)『私本太平記』(1959年)

Wikipediaより

吉川英治氏は歴史小説界においては、黒田如水にも引けを取らぬほどいやそれ以上と言えるほどの伝説的存在であるのですが、特に『宮本武蔵』『三国志』は読んだことが無い人も知らぬ間に影響を受けているのです。

現在「三国志演義」といわれるようになったのは著者の書いた『三国志』があまりにも人気であったため、本来の歴史である正史と区別するために名付けられたからです。今日におけるまで長く続いている三国志ブーム火付け役になったのも著者の描いた『三国志』からです。

さらに、宮本武蔵は巌流島の戦いで遅刻してきたとされていますが、それも著者の描いたフィクションであって、武蔵本当は遅刻していないんですよ!自分も初めて知った時には驚きました。
現在にあっても「武蔵遅刻説」はいまだに続いているわけですから、著者の影響力の大きさがとてつもないことが分かりますよね。

また、彼の名を冠とする「吉川英治文学賞」は一流小説家としての勲章ですし、「吉川英治文学新人賞」は小説界の登竜門ともいえる賞で、どちらも非常に権威ある賞です。最近では「吉川英治文庫賞」という大衆シリーズ小説を対象にした賞も出来ました。読書家のみなさんならきっと著者の作品を読んだことはなくとも、存在は知っているかと思います。

概要


『黒田如水』は黒田官兵衛59年の中の30-36歳を描いた作品です。たった6年ですがこれから天下に飛躍していく官兵衛においては羽柴秀吉との出会いや竹中重治との別れ、有岡城における唯一の失敗など人生で最も濃い時期かもしれませんね。ストーリーとしては、以下のような構成になっています。
・毛利家につくか、織田家につくか揺れる小寺家を、織田家につくように説得
・織田信長、そして羽柴秀吉との出会い
・謀反を起こした荒木村重の説得

さらに大きく分ければ、荒木村重の説得前と後に分けられると思います。

おすすめしたい人


・吉川英治の名前は知っているけど読んだことはない人

「吉川英治文学賞」「吉川英治文学新人賞」の存在もあり、読書家のみなさんであれば吉川英治氏の存在は知っている人も多いでしょう。中には、この人どんな作品あるだろう?と読んでみようと思った人もいるかもしれません。しかし、大抵の人はそこで挫折してしまうでしょう。何てたって、吉川作品はとにかく長いですから。『宮本武蔵』全8巻、『三国志』全10巻、『新・平家物語』全20巻。まあ読めないですよね笑

そんな吉川作品において『黒田如水』は1巻完結という奇跡的な短さです!始まりとしてはこれ以上ない作品だと思います!

小説の魅力


・展開が早いこと
1943年に描かれた作品とは思えないほどに読みやすいです。特に、歴史小説のなかではかなり会話文の比率が高いと思います。物語のメインとなる荒木村重の説得までは、物凄くリズム良く物語が進んでいくので冗長さを感じさせません。

・天才軍師の人間味
官兵衛は戦国随一の頭脳を持っていることは誰もが認めるところだとは思いますが、中国大返し時のエピソードなどにより冷徹な策士といった印象が根強く持たれています。
本書では、そんな印象を払拭するように、彼の業績以上に人間の部分を強く描いているのように思いました。開幕1ページ目から一般的な官兵衛のイメージを覆す登場の仕方で、親しみを持ってもらえるのではないかなと思います。

また、死を覚悟しつつもなんとか一日一日生き延びようとする姿や息子が生きていたことによる重治への感謝で泣いてしまう姿なんかは物凄く人間味に溢れていましたよね。あと、妻のことが本当は大好きなのがよく分かります笑

まとめ


『黒田如水』はこれから才覚を天下に轟かせることになる官兵衛の、いわば下積み時代を描いた作品です。通常の吉川英治作品からいったら「短編」とも形容できるほどの短い作品ですので、是非この機会に吉川作品の入り口としてみてはいかかがでしょうか?

【蛇足】どうでもいいことなのですが、黒田如水を名乗る前の時期を描いた作品で、作中の呼び名も「官兵衛」なのにどうして『黒田如水』というタイトルなのでしょうか?もし、知っている人いたら教えてくれると嬉しいです!!

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