軍配者シリーズ第二作、本巻の主人公は苦難の天才軍師・山本勘助。ついに仕えるべき主を見つけ、軍略の才能を開花させていく。
風魔小太郎、冬之介(宇佐美定満)との成長と友情も見逃せない。彼らの誓い合った夢は果たされるのか?
どんな小説家?
富樫倫太郎 1961年、北海道生まれ。98年に第四回歴史群像大賞を受賞した『修羅の跫』でデビュー。「陰陽寮」シリーズや「妖説源氏物語」シリーズなどの伝奇小説、『蟻地獄』『堂島物語』などの時代・歴史小説、警察小説『SRO 警視庁広域捜査専任特別調査室』など、幅広いジャンルで活躍している。
『早雲の軍配者』著者紹介文より
概要
仇敵に見つかり命を狙われる山本勘助、今川家に匿われているものの未だ軍配者としての光明は見えない。そんな勘助の運命を動かす事になったのは武田信虎であった。
実子である晴信から駿河に追放されていた信虎は、甲斐の領主の座に返りつくため勘助に一計を授ける。
勘助は己の大願と足利学校で語り合った二人の友との夢を叶えるため再び走り始める。
小説の魅力
・苦難の果てに開花する才能
生まれてまもなく苦難に見舞われ、その後も続く辛苦を乗り越え、勘助はようやく仕えるべき主のもとへと辿りつきます。
彼の過去は『早雲の軍配者』をお読みの人はご存じのとおりですが凄惨なものです。だからこそ、ようやくその才に光が当たる場面は読みごたえがあります。
生まれ、容姿、体の障害など様々な苦境を跳ねのけて、遂に「信玄の軍配者」として采配を振るう姿、本書最大の見どころはここでしょう。
・新たな出会い
原虎胤と娘の千草、雪姫など武田を取り巻く人物との出会いが本作でのもう一つの見どころです。軍配者シリーズは、キャラ立ちが素晴らしくて彼らがただ会話しているだけでも一つの見どころになってしまいます。
容姿や障害から他人から蔑まれてきた勘助に対して、彼を認め親しく振舞う人物たち。
新たな出会いによって閉ざしがちであった勘助の心の変化も一つ着してみても面白いかもしれません。
・三人の学友
足利学校でともに学んだ小太郎、勘助、冬之介(宇佐美定満)。前巻『早雲の軍配者』に引き続き、本巻でも三人の友情も胸を打たれることでしょう。彼らは性格が合うわけではありません。友達といえばきっと違うでしょう。しかし、それ以上のもので結びついています。
小太郎が死線にあれば勘助が助け、勘助が死線にあれば小太郎が助け、定満が死線にあれば、勘助が助ける。幾つもの死線の中で彼らの堅い絆が表れます。
表立っての台詞で「信じている」「好いている」と言えるのは、小太郎だけですが有事になればすっと手を差し伸べる彼らの姿はとてもかっこいいのです!
そして、足利学校で掲げた夢を果たすために生きる彼らに待ち受ける未来とは?
次巻『謙信の軍配者』での、冬之介(宇佐美定満)の活躍も非常に楽しみですね。
まとめ
『信玄の軍配者』では山本勘助がついに歴史の表舞台へと駆け上がる巻です。武田晴信の片腕として各国に勇名が轟いていく過程や、上田原の戦いでの挫折。小太郎、冬之介(宇佐美定満)との再会、武田家との交流。
本巻も見どころの多い一冊となっています!
コメント