あきない世傳 金と銀 源流篇 高田郁-九つの知恵者-

時代小説

「あきない世傳 金と銀」シリーズは「みをつくし料理帖」シリーズの著者である、高田郁さんの最新シリーズ作品です。

女衆として奉公に出された、齢九つの幸が、知恵を頼りに、商いへと邁進していく物語です。

不条理ともいえる運命を受け入れ、それでもなお自分に素直に生きる幸が非常に魅力的な作品になっています!

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どんな小説家?

高田郁 
兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒。1993年、集英社レディスコミック誌『YOU』にて漫画原作者としてデビュー。2008年、小説家としてデビューする。著書に「みをつくし料理帖」シリーズ、『出世花』などがある。

『あきない世傳 金と銀 源流篇』著者紹介文より

「みをつくし料理帖」とえいば、知っている人も多いのではないでしょうか。シリーズ観光部数は100万部以上を記録し、テレビドラマ・映画化もされた作品です。ここ最近においては、最も売れた作品の一つといえるかもしれませんね。

そんな著者の最新シリーズが「あきない世傳 金と銀」です!
「みをつくし料理帖」シリーズが料理をテーマにしたものであるのに対して、本シリーズは”商い”をテーマに描かれています。

概要

学者の娘として生まれた幸。父譲りの賢い頭脳をもった幸は、知恵をもって生きていきたいと強く願うのだった。

しかし、享保の大飢饉は生活を一変させた。父と兄を相次いで亡くし、幸自身も九つにして、奉公に出されることになったのだ。

奉公先の「五鈴屋」は四代にわたって続いた呉服店だった。「商いは悪」父から教えられてきた幸だったが、実際に働きはじめて、父の教えとは何かが違うことを感じていく。

商いに興味を持っていく幸と、不景気に苦しむ「五鈴屋」、彼らが辿っていく道とは……

おすすめしたい人

・町人ものの時代小説が好きな人へ
「あきない世傳 金と銀」シリーズは文字通り商人の時代小説です。

第一巻である「源流篇」では、まだ商売について描かれることは多くなく、奉公先の人間関係の描写に多くを割いている形になっています。
 
しかしながら、享保の大飢饉をもって商人たちがどのような思いをしたのか、庶民がいかに厳しい暮らしを強いられたかは、幸が奉公に出されるまでの過程や「五鈴屋」の懐事情から、よく分かります。

商売をする姿以外であっても、こうして享保の時代を生きた人間の趣を感じられることは、町人ものが好きな読者にとって魅力の一つですね。

・シリーズものに踏み出しづらい人へ
シリーズものには、定期的に新刊出る楽しみや、ストーリーが続いていく楽しみがありますが、一方で欠点もあります。

途中からは参加しづらい、巻数が多いのでなかなかに手が伸びにくいといった所でしょう。

しかし、まだシリーズものの時代小説を読んだことがない人は、一つ本作でシリーズものの魅力を体験してみてはいかがでしょうか?

「あきない世傳 金と銀」がなぜシリーズものに踏み出しづらい人へおすすめなのかというと、一冊が長くない点と、人気時代小説家の現在進行形のシリーズである点にあります。

一冊が長いとどうしても手を出しづらいのではないかと思います。一冊読むことに精一杯ではなかなか何冊も続けて読むことは難しいでしょう。

『あきない世傳 金と銀 源流篇』は頁数でいえば279頁であり、比較的短くまとまっています。

そして、どうしても続きが気になる終わり方をするので、そのまま二作目以降へと移っていくことが出来るでしょう。

続いて、作者は「みをつくし料理帖」シリーズを書いた著者であることから、実績十分の小説家です。

やはり最初は王道から入ることが確実で、そういう点でも本シリーズはおすすめなのです。

小説の魅力

・幸の知恵と素直さ
主人公の幸は、九つにしてなかなかに辛い経験を重ねていくことになりますが、それでもなお、知恵を身につけることで道を少しずつ開いていきます。

賢いだけでなく、柔軟であり、色んな考えを吸収しようとする姿は、年長者である私たちにもかなり見習うべき点があるように思いました。

また、素直であることと従順であることが違うこともよく分かります。

幸がいろんな人から好かれる点も、ただ単に従順なのではなく、真に素直であるからなのでしょう。

幸は魅力的な主人公であり、これから先も運命に翻弄されようと、最終的には自分自身の知恵で道を切り開いていけるような気がします。

主人公が魅力的なキャラクターに仕上がっていると、得てして小説自体も面白いものです。「あきない世傳 金と銀」シリーズの人気の理由は、幸の人柄にあるのではないでしょうか。

・五鈴屋の人間模様
「五鈴屋」の四代目徳兵衛は、商人としても主としても致命的な欠点があり、これが災いして五鈴屋の人間関係は一筋縄ではいかないものになっています。

タイトルよりもほのぼのした作品ではないことは言えるので、その点は一つご留意ください。

しかし、「五鈴屋」のリアルな関係性も魅力のうちといえるでしょう。やはり、緊張感があったほうが読者の手は進んでいくものですからね。

まとめ

「あきない世傳 金と銀」シリーズは「みをつくし料理帖」シリーズの著者の最新シリーズです。

魅力的な主人公と一筋縄ではいかぬ庶民の生活は、いずれも読者の心を掴むには十分な内容になっています。

【蛇足】個人的には、惣次が結構好きです。人気ないとは思うけど……

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