戦国好きにはたまらない、西国の雄「尼子経久」を描いた本作。
青雲の章と題された本作では尼子経久が一城の主となるまでを描いた作品になります。後半が特に面白かったです!
以下、ネタバレがありますので、未読の方はご注意ください。
どんな小説家?
武内涼 1978年群馬県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。映画、テレビ番組の制作に携わった後、第17回ホラー小説大賞の最終候補作となった原稿を改題した『忍びの森』で2011年にデビュー。15年、「妖草師」シリーズで徳間文庫大賞を受賞。主な著書に『秀吉を討て』『駒姫-三条河原異聞-』『敗れども負けず』『東遊記』『暗殺者、野風』『阿修羅草子』『源氏の白旗 落人たちの戦』「源平妖乱」シリーズなど多数。
『謀聖 尼子経久伝-青雲の章-』 著者紹介文より
概要
十一国の太守といわれた尼子経久、戦国初期の英雄はどのような男であったのだろうか?
「謀略」「聖人」「倹約家」「気前がいい」など様々な評価がなされる男、その生涯を「光」の視点から描き出す。
謀聖と言われた男が真に求めたものとは?
小説の魅力
・完全無欠の英雄として
本作の尼子経久は、貧しいもの、弱きもの立場にたち、どこまでも情け深く、正義感にあふれています。さらに容姿は長身美形、武勇にも秀でるため全ての民や女性から愛される人物となっています。
反対に彼が嫌うものは特権階級であぐらをかく武士や貴族であり、故に民のための国をつくるために立ち上がるのです。
ここまでくるとやりすぎかと思われるほどですが、英雄というのはこういうものなのでしょうか。彼のカリスマ性に踊らされるのは大層心地がよかったです。
「謀略の限りを尽くして西国を支配した戦国大名の先駆け」というイメージがあるからこそこのような人物像を作り上げたのかもしれませんね。
また、巻末の引用文献とおもな参考文献からの文中での引用も多く、たくさんの事前の調べがあっての物語であることに違いないでしょう。
「史実」にて実在したのではないかとつい思わせることで、「完全無欠の英雄」という設定を読者が受け入れやすくする効果があるのかもしれません。
小説であろうと、時代考証や史実と反することは絶対に許さない読者は結構いますからね笑
一人の英雄が何もないところから成りあがるまで、そういう物語を楽しみたい方にはおすすめです。
一方で、堅めの時代小説を求める方にはおすすめできません。
まとめ
完全無欠の英雄・尼子経久の民のための国盗り物語は、始まったばかりです。
彼がどのようにして十一か国の太守となるのか、人間性が変わることはないのか、どのような謀略が飛び出すのか、楽しみは尽きませんね!
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