これはミステリー小説なのか、冒険アクション小説なのか。
ただ、圧倒的な暴力に転がされつつも、ひと噛みしようと足掻く負け犬たち(アンダードッグス)の姿に、読む手が止まらない。
国家機密には何が隠されているのか、そしてアンダードッグスはその評価を覆すことができるのか。
どんな小説家?
長浦京 1967年埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業。出版社勤務、音楽ライターなどを経て放送作家に。その後、指定難病にかかり闘病生活に入る。2011年、退院後に初めて書き上げた『赤刃』で、第6回小説現代長編新人賞を受賞し、デビュー。17年、デビュー2作目となる『リボルバー・リリー』で第19回大藪春彦賞を受賞。19年、3作目『マーダーズ』で第2回細谷正充賞を受賞。
『アンダードッグス』著者紹介文より
主人公が命をかけて社会の裏側、黒い世界で活躍する作品を多く執筆している小説家です。本作でも、元官僚の男が全く経験したことのない裏社会でのエージェントになるところから物語は始まります。
非常にスリリングでスピード感のある作品なので、読む手が止まりません。
社会の裏側と壮大なアクションを楽しみたい人にぜひおすすめの小説家です!
概要
裏金工作が発覚して農林水産省を追われた古葉慶太は、一人の男に呼び出される。
男は、マッシモ・ジョルジアンニ、イタリアの大富豪である。半ば強制に押し付けられた仕事の内容は香港の銀行地下にある国家機密の奪取であった。
他に集められたメンバーとともに急造のチームで、彼らは任務の遂行を目指していく。
入り乱れる政情、メンバー間での裏切り、次々と死んでいくメンバー。スリリングな展開と緊張感が読者を離さない。
おすすめしたい人
・アクション小説、冒険小説が好きな人
常に生きるか死ぬかという緊張感が物語を通貫していきます!
ロシア、中国、アメリカ、イギリスなど各国の組織が時に味方となり、敵となる。
壮大なアクションだけではなく、各国の巨大組織を相手に翻弄されるアンダードッグスの負け犬たる姿も見所になっています。
寄せ集めのチームは当然にして、チームのことよりも自利を優先させます。負け犬同士での裏切り、諜報も絡み合い、ページをめくるごとに事態はより複雑で困難になっていきます。
小説の魅力
・主人公の圧倒的な成長
何も知らず振り回されるだけの主人公が、次第に各国を振り回すほどの凄腕エージェントに成長していく姿が見所です。
最初は命からがら逃げのびるだけの男が、ある時から各国のエージェントの裏をかいたり、一枚上をいくようになっていきます。
自分が負け犬であることを自覚しているからこその戦略の数々はまさに痛快です!
一方で、最後までどこか優しくて腕力がないところは、共感を持たせるというか可愛げのある部分なんですよね。
別の小説家の名前を出して恐縮ですが、船戸与一作品に出てくる主人公を連想しました。
一般男性→戦士へと変貌していく過程が本書の最大の見どころかなと思いました。
・絡み合う重厚なストーリー
ちゃんと読んでいる人ではないと、各国間の関係や今は誰が味方で敵なのか、次第に分からなくなってしまうかもしれません。
自分は、何度も「主な登場人物」の欄を見て、ようやくついていくことが出来ました。
アクションがメインの小説ではあると思いますが、裏切りが連続して起こることで物語も複雑化し、かつスピード増していきます。
始終、握力を強く読み進めることになります、覚悟してください!
まとめ
『アンダードッグス』はアクション×ミステリー小説で、多くの読者を並々ならぬ非日常の世界へと連れ立っていきます。
是非、命がけで国家機密を奪おうとする負け犬たちの奮闘をご覧ください。それでは!
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